大田区内で作品展示
東京都大田区の区立多摩川小学校(福地伸校長)で、自分たちの街の魅力を写真に撮って伝える授業が行われました。5年生3クラスの児童77人がそれぞれ夏休みに地元の矢口地域で撮った写真を5枚ずつ選び、自分でタイトルと説明を付けて作品集にまとめました。11月1日、2日には作品を紹介する発表会も開かれました。作品は、大田区の区立矢口中学校(下丸子)、矢口特別出張所(矢口)、下丸子図書館(下丸子)、カフェ・コワーキングプレイス「hatome」(下丸子)で2025年1月末まで展示されています。
多摩川小学校は2023年度から「矢口地域を元気にしようプロジェクト」をスタートさせ、「矢口地域で育ち、地域を知り、地域を笑顔にする」を合言葉に地域とのつながりを重視した取り組みを行っています。23年度には5年生の児童が地元の武蔵新田商店街や新田神社の写真を撮り、お気に入りの1枚を決めてタイトルと説明を書いて商店街の店や福祉施設などで展示しました。
24年度は、近くに本社があるキヤノンの協力でデジタルカメラ「パワーショット」が夏休みを含めた2か月間、5年生の児童全員に貸し出しされました。夏休み前の7月、特定非営利活動法人ヴォイスの横山聡理事(写真家)が自分の気持ちが伝わる写真の撮り方について子どもたちにアドバイス。キヤノン・サスティナビリティ推進部社会文化支援課の葛城結さんがカメラの使い方を説明しました。カメラを受け取った児童は廊下で友だち同士カメラを向けたり、校庭に出て植物やサッカーの練習をしている友だちを撮ったりして、カメラの扱いに慣れることからスタートしました。

夏休みの間は、夏祭りや花火大会、多摩川の自然、矢口地域で働く人たちなどを撮影したポートフォリオを作りました。9月初旬、児童は一人ずつ横山理事と話しながら、撮りためたポートフォリオから5枚を選び、タイトルと説明を考えました。作品とタイトル、説明の文章はファイルに収めて、この夏の作品集が完成です。

選んだ(多摩川小学校提供)
2日間にわたって行われた発表会には1日目は5年生の児童、2日目は保護者や地域の皆さんが参加しました。体育館のステージで児童たちが取材を再現した寸劇を上演。「多摩川小学校の児童ですが、写真を撮らせてもらっていいですか?」「どうぞどうぞ」とのやり取りからは、児童が初めて取材するドキドキ感と地域の皆さんの優しさが伝わってきます。

続いて作品の一部がスライドで上映され、撮った児童が作品の狙いや撮影場所、苦労した点などについて発表しました。撮影、取材に協力してくれた地元の人たちの名前もスライドで紹介。子どもたちがお礼の言葉を述べました。



5枚の作品のうち特に児童が気に入っている作品1枚をキヤノンが全員分パネルにして学校にプレゼント。作品が入ったファイルとともに5年生の教室前の廊下に掲示されました。

心も身体も大きく 大田区立多摩川小学校長 福 地 伸
「矢口地域を笑顔にしようプロジェクト」は今年で2年目になります。昨年度は「武蔵新田商店街を笑顔にしよう」ということでスタートしましたが、今年はその範囲を「矢口地域」に広げました。
こどもたちは、キヤノンの葛城さんからの一人一台のデジカメを手にした途端に、勝手に手足が動いていました。また、横山さんというプロのカメラマンから教わる一つ一つのアドバイスを聞いている時点で、目の輝きが違っていました。
約2か月の撮影やインタビューという期間でしたが、その間に心も身体も一回りも二回りも大きくなった感じがします。それが完成した一人一人の作品から伝わってきます。
学習発表会では、途中経過でしたが、こどもたちはその学習内容を発表しました。3人の担任の様々なバックアップがあったにせよ、主体的に活動したこどもたちの表情は皆、輝いていました。
今後は、矢口地域の様々なところでこどもたちの作品を展示し、地域の皆様にご覧いただきます。きっと、ご覧いただく皆様の顔は自然に“笑顔”になっていると思います。
今回、お世話になった特定非営利活動法人ヴォイスの橋本弘道様、横山聡様、そして、キヤノン株式会社の葛城結様、そして、取材・撮影、展示等でご協力いただいた矢口地域の皆様に、心より感謝申し上げます。
多くの学びの時間 大田区立多摩川小学校教諭 宮本 光江
こどもたちの「学習の振り返り」から、矢口地域を写真に撮ることを通して、こどもたちは人との接し方や働くことの素晴らしさ、さらには自分の在り方までも考える学びの時間となっていたのだということを感じました。
横山さんから写真の撮り方を教えていただく中で、「失敗に思えた写真も見方によっては成功になるのだ」ということを発見し、普段から失敗と決めつけないことが大切だと気付けた子がいました。また、取材を重ねたことで、店主の方の闘志とこれまでの苦労を知り、自分の夢を叶えていくすごさを感じた子もいました。公園や多摩川の撮影では、そこにいる人と、もっと小さい頃の自分とを重ね合わせて、変わらぬぬくもりある自然の存在に気付かされた子もいました。取材が苦手だった子も、優しく答えてもらったことで、「嬉しかったし、また取材に行きたい。」と、取材が好きになった子もいました。
そんな多くの学びをさせていただけたのは、多くの方のお力添えあってのことです。元読売新聞社カメラマンの横山さんには、何度も学校に足を運んでいただき、撮影のコツや大切な狙いを教えていただいたり、写真選びの相談に乗っていただいたりしました。キヤノン株式会社様には、3か月間にわたり一人1台のカメラを貸していただきました。さらにカメラの使い方の指導や会社の案内もしてくださいました。その他、取材に行かせていただいた施設やお店の方々、公園や多摩川で偶然出会ってインタビューに温かく応じてくださった方々のご協力に、感謝の気持ちでいっぱいです
11月に行った学習発表会では、77人が見付けた「矢口地域」を、他の学年の児童や保護者に伝えることができ、多くの感動の声をいただきました。地域の施設に写真を展示していただいておりますので、さらに多くの人に見ていただけたらと思っています。また、展示場所や、取材に行った方々にアンケートに答えていただき、今後それをまとめて次回の学びに生かしていけたらと思っております。