Other voices 1.
吉田 勝己
グローバルって何?
英国に10年滞在して1985年に帰国したときに、「グローバル」というあまり聞きなれない言葉が気になりました。
10年の滞在で得た大きなもののひとつは、外から日本を見て新たな日本像、日本人像を学ぶことができたことです。グローバルという表現を頻繁にしなければならないほど日本はグローバルではないんだと思いました。
グローバルという言葉から、語学、英語が脳裏に浮かぶ日本人が多いように思いますが、さて、グローバル化とはどういうことなんでしょうか?
まず、他民族多民族の文化習慣を理解する、または理解しようとすることだと私は思います。そのツールとして語学があります。語学からもその民族の文化習慣を学ぶことも多いでしょう。
世界には多民族国家がたくさんありますが、その共存方法には二種類あると思います。ひとつは多(民族)文化主義、もうひとつは同化主義です。
同化とは、異なる文化の個人が文化的アイデンティティを放棄し、支配的な文化の価値観、習慣、伝統を採用する文化統合のプロセスです。 多文化主義は、社会内の文化の多様性を認める社会政策です。どちらの場合でも宗教が違うケースもあり、異文化との摩擦はあります。
どの国がどの主義の政策をとっているかここでは述べませんが、私が二度にわたり計12年間住んだEngland(英国は4つの国から成り立っているので、あえて私が住んだEnglandについての意見です)について私が感じた他民族に対する区別差別について少し触れてみようと思います。
ロシア(200民族以上)、ミャンマー(130以上)、中国(漢族を含め56)より数は少ないですが、Englandも移民が多い多民族国家といってよいと思います。もちろんEngland文化習慣が中心の国です。他民族は自分たちのIdentity を保ちながらEnglandのルールに従い共存しています。それゆえか、目立った差別的な政策や弾圧はないように思います。しかし他民族文化を受け入れて共存しているかと問うと大きな疑問はあります。本音は同化主義だと思いますが、表立ってそんな政策はとっていません。
少し話が逸れますが、Engalndを含む英国には他にスコットランド、ウェールズ、北アイルランドという国があります。私が初めてウェールズを訪ねた時驚いたのは、バスの運転手も乗客も皆英語ではなくウェールズ語を話していたことです。もちろん、皆英語は話せますが、普段ご近所同士の会話はウェールズ語のようでした。
学校での授業もウェールズ語で行われていることが多く、一時英国政府は英語での教育政策をとりましたが、ウェールズ政府は、総人口300万人に対し、2050年までにウェールズ語話者を100万人に増やす計画を持っているようです。1980年以降、ウェールズ語で教育を行う(ウェルシュ・ミディアム)学校に通う子どもたちは増加し、ウェールズ語バイリンガル(二言語を使用する)学校や2つの教授言語を使用する(デュアル・ミディアム)学校に通う子どもたちは減少しているようです。ウェールズは英国の中の一国家ですので移住してきた民族とは異なるはっきりとした区別があるわけです。
イギリス人 は意識してないと思いますが、外国人の私は滞在中、当然差別を感じました。ただ、やさしく接してくれる区別の面も多々ありました。私は永住者ではないので、それは素直に受け入れて生活しました。
多民族国家で、それぞれの文化習慣を受け入れるが区別(生活区域を分けるなど)して共存している国もあります。多文化主義国ではその政策に差別があってはならないと思います。
過去の日本の満州、台湾、朝鮮、沖縄に対する政策はいろいろなアングルで伝えられていますが、どうだったのでしょうか?
今後日本では労働者確保のため外国人労働者が必要と言われています。すでにあちこちで外国人労働者との摩擦のニュースを聞きますが、もっと多くの日本人が、文化習慣の違いに困惑する時期が来ると思います。いかに共存していくかがこれからの日本人に課せられた大きな課題だと思います。
異文化に触れ、違いを理解し、ともにCommunication を取り、共存していく方法を探さなければなりません。