Other voices 4. 吉田 勝己

Other voices 4.

吉田 勝己

流暢な英語って?

 日本人が思う「流暢な英語」とは何でしょうか。
各国の国連大使の英語を聞いたことがある方は気づいていると思いますが、それぞれの国のアクセントが強く、慣れないと聞き取りにくい英語が多いでしょう。しかし、国を代表する国連大使ですから完璧な英語と言ってよいと私は思います。日常の英会話も全く問題なく話せる人たちです。

 1933年に松岡洋右が原稿なしで1時間以上にわたって行った国際連盟脱退の演説に感動したことがあります。彼は米国留学経験者なので英語が話せるのは理解できますが、大変明解に、アメリカアクセントなしで、日本人英語でしっかりと演説しました。残念ながら、これを機に日本は日中戦争、太平洋戦争へと突き進んでしまいます。

 演説(Speech)にはそれなりのテクニックが必要なので日常会話の流れでは説得力に欠けます。その点、東京オリンピック招致イベントでの佐藤真海さん、安倍晋三さんのスピーチには説得力を感じました。流暢とは言い難いのですが、間、ペース、ストレス(強調部)ともに良い流れのスピーチだったと思います。流暢さではなく、相手に伝える流れです。

 日本人は、カリフォルニアなまりの極端なアメリカアクセントをなぜか英語(実は米語)と思い込んでいるようで、言葉一つ一つを明解にしゃべる話し方より、流れるようなしゃべり方を「流暢」と感じてしまうように思います。もともと、英語は米語に比べると日本語のカタカタに近い(実は全く違うのですが)発音が多く、日本人には米語の方が英語感があるようです。
 日常会話は、一つ一つの言葉の発音より全体のイントネーションの方が重要だと思いますが、これについては別の機会に触れたいと思います。

 日本人はNativeのようなしゃべり方にこだわります。でも、外国人はそれなりのなまり、話し方があって当然です。それより相手に伝わることが大切です。日本人には正しく発音できない単語もありますが、伝えるテクニック、または別の単語を使うなどの工夫があれば伝わります。
 聞く方も忍耐強く聞く努力をすべきなのは言うまでもありません。